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『競争と公平感 ―市場経済の本当のメリット (中公新書)』

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

「エピローグ」で、「競争と公平感」についてフィギュアスケートを例にとって述べられたくだりがたいへん印象に残っている。
定められた採点基準をうまく利用して得点を最大にしようとする選手と、自分の得意な技に磨きをかけて得点を上げていこうとする選手、それぞれの戦略があるという。
これは市場の競争と似ている。大切なのは、ルールが「一人勝ちしにくい」方向へ常に微調整されていること。
フィギュアスケートからメダル獲得競争が無くなったとして、それでもなお選手達は、あれほどまでに感動的な演技をすることが出来るだろうか。

競争によって問題が生ずるのは、競争そのものが悪いからではなく、ルールに公平性が欠けているからだという主張には頷けるものがある。
ただ、市場競争の公平性を保証するのは本来なら政府のはずだが、大企業のお先棒を霞ヶ関の省庁が担いでいるわが国の現状は、嘆かわしい限りだと私は読みながら思ったのである。

それにしても、新書ながら読みごたえのある内容だった。

アンケートの結果によれば、わが国は「貧富の差が生まれたとしても多くの人は自由な市場でより良くなる」と考える人と「自立できない非常に貧しい人たちの面倒をみるのは国の責任である」と考える人の割合が、いずれも主要国の中で最低だったそうである。
つまり、「市場競争も嫌いだが、政府による富の再分配政策も嫌だ」という考え方のようだ。
著者は、この、世界からみたらずいぶんと特殊な結果を紹介するところから話を紐解いていく。
そして、「自由な市場経済とセーフティネットという組合せが日本人の間に支持されるようになるにはまだ時間がかかる可能性がある」と結論づける。

しかし話はそれで終わりではなくて、日本人が競争嫌いな理由や公平感のあり方、働きやすさなどについて、様々な研究や調査結果を披瀝しながら話を展開していく。
私は、これらの随所に紹介されている研究成果や調査結果が非常に興味深く、「こんなことを研究している学者もいるんだなー」と、感心してばかりだった。

最低賃金と失業率の関係とか国債の価格と金利の関係とか、経済学を知らないものには「えっ」と驚くようなことが次々に明かされる。

経済を「わからないから」では済まされないなと思った一冊であった。