ROKU's Daily Life

あんなことやこんなこと

『百年の手紙 ――日本人が遺したことば(岩波新書)』

これまでいったい何通の手紙が書かれたことだろう。
この百年だけでも1億人が3世代。日本人ひとりが一生の間に書く手紙を平均50通と仮定して、150億通。
それらをぜんぶ紡いでいったとき、そこに現れる歴史というのは、教科書で習うような上っ面だけの歴史とはまったく別のものであるに違いない。

最初に挙げてある田中正造の直訴状の迫力にも圧倒されたし、「私の好きで好きで心配で心配でたまらない人」と書き送った軍人の愛妻家ぶりにも心を動かされた。

だが、このたび最も私の心に残ったのは、人間魚雷「回天」の搭乗員塚本太郎の言葉だ。

「壕ヲ埋メタ屍ガ無ケレバ城ヲ攻落スルコトハ不可能ダ」
「愛スル人々ノ上ニ平和ノ幸ヲ輝シムル為ニモ」
「母ヲ忘レヨ」

大和ミュージアムでは彼の肉声を聞くこともできる。

「十二月八日のあの瞬間から、我々は、我々青年は、余生のすべてを祖国に捧ぐべき、輝かしき名誉を担ったのだ。人生二十年。余生に費やされる精力のすべてをこの決戦の一瞬に捧げよう」

勇ましいとか、立派だとか思う人もいるだろう。
だが私は、若者にこのような悲しい決意をさせてしまった当時の世の中に憤ってしまう。

塚本太郎は、母親の着物で作った座布団を回天の操縦席に敷いて出撃し、21歳3ヵ月で亡くなった。

私の二人の息子はいま22歳と20歳である。
勇ましくなくとも、立派でなくとも、自分の人生を歩んでほしい。国家なんぞというもののために妻に涙を流してほしくない。切にそう願うのみである。

百年の手紙――日本人が遺したことば (岩波新書)

百年の手紙――日本人が遺したことば (岩波新書)